プロ野球の公式戦が終わるとオフシーズンとなり、選手が契約更改によって来季の年俸が決またり、目玉選手の他球団移籍が行われる時期となります。「シーズン中よりもオフシーズンの話題のほうが楽しみ」と言う方も少なからずいることでしょう。
中でもFA(フリーエージェント)制度を利用し、他球団に移籍する選手には注目が集まります。2018年のシーズンオフは広島東洋カープの丸佳浩(まるよしひろ)選手、埼玉西武ライオンズの浅村栄斗(あさむらひでと)選手がFAの権利を行使して他球団への移籍を果たしました。
両選手ともチームの中心選手で、いずれも2018年のシーズンではリーグ優勝に貢献した選手でもあります。主軸選手が移籍してしまうと広島にとっても西武にとっても大きな痛手です。
そこで移籍元のチームに対する補償として人的補償がもうけられています。今回は人的補償について紹介したいと思います。
まずはFA制度について
人的補償はFA権を使って移籍した選手がいることで発生する補償です。まずはFA制度について簡単に触れておきたいと思います。FAとは「フリーエージェント」の略称で名前の通り自由な契約が可能になる権利です。
アメリカのメジャーリーグ(大リーグ)においても設けられている制度で、日本では1993年のシーズンオフに導入されました。プロ野球選手になれば誰でも与えられる権利ではありません。権利を取得するには要件があります。以下をご覧ください。
一軍登録145日を1年とし、累計8年経過で取得
※2006年までのドラフト制度で入団…累計8年経過(通算1160日)
※2007年以降のドラフトで入団した高校生選手…累計8年経過
※2007年以降のドラフトで入団した大学生、社会人選手…累計7年経過(通算1015日)
また、メジャーリーグなど海外への移籍が可能なFA権を取得するには累計9年経過で取得できます。 日本のプロ野球は3月末から10月くらいまで公式戦を行いますから半年間の開催としてもほとんどの日数を一軍登録されても8年(7年)かかって取得できる権利です。長きにわたってチームに必要とされなければ取得できないものです。
ちなみに、丸選手は高卒で広島に入団して2018年のシーズンオフにFA権を取得。高卒で入団しても29歳で取得していますから、ようやく取得できたという感じでしょう。
人的補償は移籍元へ選手が入団
さて、今回詳しく紹介したい「人的補償」ですが、概要としては選手が移籍したチームから選手を獲得できる制度です。人的補償に関しては任意であり必ずしも要求しなけらばならないわけではありません。
例えば、広島カープは丸選手が読売ジャイアンツ(巨人)に移籍したんので、巨人から選手が獲得できます。ただし、必ずしも人的補償として選手を獲得しなくてもいいわけです。
補償として必須なのは金銭補償となります。金銭は移籍した選手の年俸、さらに、人的補償を選択した場合でもことなってきます。ポイントになるのはFAで移籍した選手の年俸です。所属しているチーム内でランクが決められています。
Aランク…年俸が上位3位以内
Bランク…年俸が上位4位から10位内
Cランク…年俸が上位11位以下
度々、例にあげますが丸選手は2018年の年俸が2億1000万円で広島カープの年俸ランキングでは2位になっています。つまり、Aランクですね。AランクとBランクの選手ならば移籍されても人的補償があたえられます。よって、丸選手が移籍してしまった広島カープは巨人から選手を1人獲得できます。
ただ、巨人は28人まで選手をプロテクト(人的補償で移籍させない選手)できますので、プロテクトされていない選手から1人獲得することになります。28人と言うのは1軍に登録できる選手の数(主力選手)ですから、広島は巨人の坂本勇人(さかもとはやと)選手のような主力選手を獲るのは不可能に近いわけです。
プロテクトから漏れるのは若手選手や1軍になかなか定着できない選手がほとんどで、Aランクの選手が移籍しても人的補償を要求せずに金銭補償のみにとどめるケースもあります。
ちなみに金銭補償は選手の年俸を基準に以下の割合でもらうことになります。
Aランク…旧年俸の0.8倍(人的補償ありなら旧年俸の0.5倍)
Bランク…旧年俸の0.6倍(人的補償ありなら旧年俸の0.4倍)
Cランク…金銭補償も金銭補償もなし
FA権は1度だけではなく複数回取得する場合もありますが上記で示した金銭補償の割合は1回目のFA取得で他球団に移籍した場合になります。いずれにせよ、Cランクの選手には補償がありません。
人的補償で移籍した選手が活躍しているケースも…
皮肉な話でもあり、少し失礼な内容かもしれませんがFA移籍した選手選手より人的補償で移籍した選手が活躍しているケースもあります。2013年のシーズンオフに当時、広島カープの中心的存在の投手である大竹寛(おおたけかん)投手が巨人への移籍を決断します。大竹投手の人的補償として広島は一岡竜司(いちおかりゅうじ)投手を獲得します。
大竹投手は巨人移籍後、先発投手として2014年シーズンから9勝、3勝、6勝、4勝とあまり振るわない成績。2018年シーズンはわずか2試合の登板にとどまりました。一方の一岡投手は中継ぎ投手として2014年から31試合、38試合、27試合、59試合、59試合と安定した活躍をみせています。移籍初年度の2014年にはオールスターゲームにも出場しています。
選手は環境が変わると何かが好転することもあったりするので人的補償で移籍した選手にも注目してみると面白いですね。FAなど、移籍に関して取り上げた雑誌も販売されています。気になる方は是非読んでみてください。
人的補償は任意の補償
プロ野球のオフシーズン(ストーブリーグ)の話題は選手の移籍や獲得に注目が集まります。特にFA移籍する選手にはランクに応じて補償が設けられているので補償についても目が離せません。人的補償は任意のものですが、獲得した選手が活躍する場合も…。人的補償にも注目してみましょう。
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